もちをのどに詰まらせたら
もちをのどに詰まらせた場合の
傷害保険との関係
例えばですが、もちをのどに詰まらせて窒息した場合などと傷害保険との関係について、これからお話をします。
生命保険会社の扱う傷害特約や災害割増特約などにおいては、通常、約款での別表において、対象となる不慮の事故の分類項目での除外規定(要するに除外する事故)として、疾病による呼吸障害、嚥下障害、精神神経障害の状態にある者の、食物その他の物体の吸入または嚥下による気道閉塞または窒息、などが明示されています。
そして、この除外規定の取扱いについては、生命保険契約に傷害特約・災害割増特約を付加した被保険者が気道内の消化されていないかまぼこによる窒息が原因で死亡した事案(東京地判平成21年12月22日)において、本件窒息事故がアルツハイマー型認知症によったものであることを否定したうえで、被保険者がアルツハイマー型認知症に罹患している状態だったことが除外規定の文言に該当することを理由に請求が棄却されています。
このことから、今後、誤嚥事故において生命保険契約に付加された災害関係特約に基づく保険金の支払の可否が争われる場合は、被保険者の障害状態が除外規定に該当するか否かの判断が重要になると思われます。
また、損害保険会社の行う傷害保険では、約款で生命保険会社のように除外規定が明示されてはいないのですが、かわりに規定されている疾病免責条項に関しては、保険会社側の主張・立証をどの程度行えばいいのかという重要な問題が存在しています。
最近の裁判例では、単に被保険者に疾病の既往歴や素因があるとの主張・立証では足りず、特定の疾病による特定の症状のために本件事故が惹起されたことの主張・立証が必要であると解するのが相当である、との見解も示されています(札幌地判平成23年9月28日)。
なお、損害保険会社の中には、最近の傷害保険の約款改定作業において、保険金を支払わない場合として、「被保険者の誤嚥によって生じた肺炎。
この場合、誤嚥の原因がいかなるときでも、保険金を支払いません」との規定を設けたところがあり、このように誤嚥が生じた原因が傷害であっても保険金を支払わないことを明示する保険会社が今後増加するのではないかとも思われます。
契約締結時にどの損害保険会社の傷害保険契約を選択するかを判断をする際には、いざというときに大変影響が大きいこの規定の有無に関する確認を必ず行って、できるだけカバーの広い保険契約を選択して下さい。
通常は約款をなかなか読むことのない契約者に対する保険会社の誠実さのような部分が、こういうところで垣間見えるような気がしています。