近頃の話題やニュースから

2023/07/20 近頃の話題やニュースから

ウナギ

ウナギ

もうすぐ土用の丑の日ですね。今年は7月30日だそうです。すでにテレビのニュースでも鰻屋さんの人気店が特集されたりしていますが、やはりウナギといえばレッドリストとワシントン条約でしょうか。この時期になると注目が集まりますね。

ワシントン条約も採択されてから今年で50年目だそうです。国内での正式名称は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」です。きっかけはアフリカ象の象牙の密漁を止めさせるために国際的な商取引の規制の必要性が求められたことなどだったそうですが、日本では、1993年にその国内法であるいわゆる「種の保存法」が施行され、現在に至っています。

ウナギに関しては、かつて稚魚を中国で養殖し日本に輸出などしたことから資源が激減したヨーロッパウナギ(European Eel)が、IUCN(国際自然保護連合)レッドリストに掲載されることなく2009年にワシントン条約の付属書Ⅱ(現在は必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を規制しなければ絶滅のおそれのあるもの)への掲載が発効し、2010年にはEUによって輸出入が禁止され、その後、IUCNレッドリストのCR(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)として掲載されています。アフリカ諸国からの輸出によるヨーロッパウナギの中国経由での日本への再輸出はまだ続いてはいるようですが、これらのヨーロッパウナギの取引規制の流れは、現在IUCNレッドリストでUN(CRほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)となっているニホンウナギ(Japanese Eel)の今後の取引規制にも通ずるものと危惧されているのです。

ニホンウナギの産卵場所がマリアナ海嶺であること、そしてその後稚魚は海流に乗ってレプトケファルス、シラスウナギとなって日本沿岸にやってくることなどが近年の調査・研究で明らかにされると共に、ニホンウナギの資源管理や密漁対策として、各都道府県ごとの漁業調整規則での罰則がこの12月から大幅に強化されるようです。ただ、日本では野生動物の規制法としていわゆる鳥獣管理保護法があるものの魚類は対象外であり、またワシントン条約の付属書に掲載されていないことからニホンウナギは種の保存法でも規制対象とはなっていないなど法律による規制がなく、その点では不備があると指摘できるでしょう。

また近年、ウナギの完全養殖を目指す動きも活発化しています。江戸中期に平賀源内が土用の丑の日に鰻を食べるのを流行らせて(諸説あり)以来、多くの人々から愛されてきた鰻がこれからもずっと継続して食べていけるようになってほしいものです。

追伸 そういえば、もう30年近く前ですが、熊本の鰻屋さんで鰻丼を注文したら、お頭が椀から突き出ていて愕然とした記憶があります。青天の霹靂というか、好物の鰻が生まれて初めて魚だということに気付かされた瞬間でした。それから数ヶ月間鰻が食べられませんでした。でも最近、怖いもの見たさにもう一度訪ねてみたい気もしています・・・


参考にした文献
IUCN Red List of Threatened Species European Eel,Japanese Eel
経済産業省HP「ワシントン条約(CITES)」より
環境省HP「種の保存法とは」より
水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について」(平成28年7月)
2007年6月12日朝日新聞「 欧州ウナギ、取引規制 EUは漁獲削減へ ワシントン条約」
2022年6月24日WWFジャパン「ワシントン条約(CITES)とは?その誕生と仕組みについて」
2023年3月28日毎日新聞「くらしナビ・環境:ワシントン条約50年、効果は」
2023年5月31日NHK NEWS WEB「シラスウナギ漁 違反などの罰則大幅強化 漁業関係者に説明会」

© 弁護士 石田清彦(飯沼総合法律事務所 所属)