近頃の話題やニュースから

2023/11/08 近頃の話題やニュースから

夏日真夏日

夏日真夏日

今更ですが、今年の夏は凄すぎました。何か真夏日が永遠に続いていた感じですよね。外を歩いていても強い日差しが当たり前で、日陰を探すことが日常になっていた感じです。この秋というか10月、11月になってもまだまだ季節外れの気温のニュースが流れていて、いったい日本はどうなっていくんだろうと、ふと心配になってしまいます。

そこで、今回は夏日と真夏日について調べてみました。暑い日に用いられるこれらの予報用語ですが、気象庁によれば、最高気温が25℃以上の日を夏日、最高気温が30℃以上の日を真夏日といいます。今年のような状況だと真夏日のほうに注目が集まっていて、夏日は影が薄かったように感じていますが、気象庁のホームページで確認をしてみると、なんと東京では早くも3月24日に25.0℃になっていました(以下で示す地上気象観測地点は「東京(東京都心)」としますが、これは2014年より千代田区北の丸公園とのことです)。

実は、この日は桜が満開になった(気象庁発表)2日後のことで、3月22日のニュースでは東京の上野公園は見頃を迎えた桜を楽しむ人たちで溢れていて、「東京で桜満開、全国トップ 2番目の早さに並ぶ」という同日の共同通信の報道からしても、今年は春から例年よりも暖かかったことがわかります。そして、夏日は10月どころか11月7日にも27.5℃などと散見されるわけですから、結局、夏日は1年のうち8か月近く存在するということになるので、もう「夏日」という言葉自体を変えた方がいいような気もしてしまいます。
また、真夏日のほうも、今年の「東京(東京都心)」では、90回の真夏日(最初は5月17日31.6℃、最後は9月28日33.2℃)を記録しており、特に8月はすべて真夏日だったようで(そうだったのかと今更ながら驚いています)、ひと月すべての日が真夏日になるのは観測史上初とのことです。さらには、22回の猛暑日(最高気温が35℃以上の日)(最初は7月10日36.5℃、最後は8月29日35.0℃)も記録していて、関東に目を向けると、群馬県桐生市では、今年46日も猛暑日(最後は9月19日35.6℃)となっていて、年間猛暑日日数が46日というのは1994年大分県日田市の45日を抜いて国内歴代最多記録だそうです。一概には言えませんが、その当時九州に住んでいて陽炎のかかる夏を経験してきた身としては、東京やその近郊でも、熱すぎて裸足で歩くことができない砂浜(海水浴の際に痛いほど経験しました)や柑橘畑だらけの山々(もしもこうなったら「フルーツ狩り」が人気になりますね)の訪れが間近に迫ってきているように思えてなりません。

なお、日本の最高気温の記録としては、1933年7月25日に観測した山形市の40.8℃がその後74年間も記録を保持していたようですが、2007年以降、熊谷市、多治見市、浜松市、四万十市、岐阜県金山町、美濃市などがその記録を塗り替え、現在は2018年7月23日に観測した熊谷市と2020年8月17日に観測した浜松市の41.1℃となっています。餃子の争いみたいですね。それと、このように記録が伸び続ける意外な原因の1つとして「観測値統計方法の変更」があることも指摘されています。観測値の採用が2000年12月31日までは「1時間毎」、その後2008年から2009年にかけてが「10分毎」、そしてその後現在に至るまでが「10秒毎」となっているそうなんです。知りませんでした。

.ところで、東北や北陸などの日本海側が時にとても暑くなることがあるのはなぜだかわかりますか。それはフェーン現象(湿潤な空気が山を越えて反対側に吹き下りたときに、風下側で乾燥した高温の風が吹き、そのために付近の気温が上昇する現象)によるものだということです。2016年12月22日に新潟県糸魚川市で発生し147棟を焼いた大規模火災は鎮火まで10時間半近くもかかったようですが、当時、日本海の低気圧に向かって強い南風が吹いていて、気象庁によると、糸魚川市では午前10時過ぎに14.2mの最大風速を記録し、最大瞬間風速は正午すぎに24.2mに達したとのことです。糸魚川市では正午までに20℃近くまで気温が上昇し、隣の上越市では湿度が40%台と乾いていたことから、この強風でフェーン現象が起きたと気象庁はみているようです。

火元となったラーメン店では、店主が鍋をガスコンロの火にかけたまま店を離れたため、鍋の内容物などが発火して壁などに燃え移り、他の店舗や住宅などを焼損させたものですが、業務上失火を問う刑事裁判の判決では、被告人となった店主の注意義務違反の程度は著しいとしたものの、「重大な結果となった要因としては、被告人の過失以外にも、折からの強風により飛散した火の粉が延焼範囲を広げたことなどの当時の気象状況に基づく偶発的な事情の存在も挙げることができ」るなどとして、被告人に禁錮3年、執行猶予5年を言い渡しています。気象現象を考慮に入れた珍しい裁判例といえると思います。

いかがでしたか。近年日常的に使われる夏日や真夏日という用語ですが、少し奥深さも感じていただけたでしょうか。そのうち冬日や真冬日についても取り上げたいと思います。


参考文献
気象庁「よくある質問集 – 気温について」
   「過去の気象データ検索 – 日ごとの値」
   「歴代全国ランキング」
   「フェーン現象」
2014年11月14日気象庁観測部「『東京』の観測地点の移転について」
2023年8月24日日本気象協会 tenki.jp「年々増加する猛暑日 意外な原因の1つ『統計方法の変更』」
2016年12月23日朝日新聞「強風、暴れる炎 黒煙『まるで空襲』『もうだめだ』 糸魚川大火」
新潟地高田支判平成平成29年11月15日Westlaw文献番号2017WLJPCA11159003

© 弁護士 石田清彦(飯沼総合法律事務所 所属)